新型コロナ ワクチンの開発状況は?

今も世界中で広がっている新型コロナウイルス感染症の終息への決定打となりうる候補の一つとしてワクチンが挙げられます。

そもそもワクチンとは何か、そして新型コロナワクチンの開発状況について紹介します。

そもそもワクチンとは?

例えば麻疹(はしか)に罹ると、その人は多くの場合生涯麻疹には罹らなくなります。

これがいわゆる免疫と呼ばれるものですが、ワクチンは感染症に罹ることなく免疫をつけることができます。

ワクチンには、

・不活化ワクチン:インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン

・生ワクチン:MMR(麻疹・風疹・おたふく)ワクチン、経口ポリオワクチン

・トキソイド:破傷風ワクチン

などがあります。

ワクチンによって感染症はどれくらい減ったのか?

人類の歴史は感染症との戦いの歴史でもありますが、ワクチンは人類にとって最大の発明の一つであり、ワクチンによって多くの感染症が激減してきました。

天然痘は人類史上初めて根絶できた感染症ですが、これはワクチンによって成されたものです。

またポリオは日本をはじめ多くの国で野生株による感染症はなくなっています。

ワクチンがどれくらい感染症を減らしたか(Leon Farrant氏のInfographicより)
ワクチンがどれくらい感染症を減らしたか(Leon Farrant氏のInfographicより)

このように、ワクチンは感染症対策の上で欠かせないものです。

なぜ新型コロナのワクチンが重要なのか?

日本人の多くはまだ新型コロナへの免疫を持っていません。

770万人という世界最多の感染者を出しているアメリカ合衆国でも、抗体陽性率は10%に満たないという結果が報告されています。

私たちのほとんどは新型コロナに対する免疫を持っておらず、ユニバーサルマスク、3密を避けるといったWithコロナ時代の生活を余儀なくされています。

もし私たちがワクチンによって免疫を獲得できるようになれば、これらの生活は徐々に緩和されていくことでしょう。

ワクチン開発のタイムライン

従来のワクチン開発スケジュール(DOI: 10.1056/NEJMe2025111より)
従来のワクチン開発スケジュール(DOI: 10.1056/NEJMe2025111より)

通常、ワクチン開発は10年スパンで行われるものです。

ワクチンの元となる標的の発見と検証、前臨床試験や製造開発に3~8年を要し、10名以上の人を対象に安全性を検証する第1相試験、100名以上の規模で安全性と免疫原性(抗体が産生されるのか、リンパ球の反応などの評価)を検証する第2相試験、1000人以上の規模で行われ安全性と有効性を検証する第3相試験までにさらに最大10年を要します。

ワクチンは有効性だけでなく安全性の検証が非常に重要であり、十分な時間をかけて検証が行われてきました。

新型コロナのワクチン開発状況

開発中の新型コロナワクチンの種類(Nature Materials volume 19, pages810-812(2020))
開発中の新型コロナワクチンの種類(Nature Materials volume 19, pages810-812(2020))

新型コロナのワクチン開発はこれまでにないスピードで進んでいます。

WHOによるとすでに臨床試験が行われているワクチンは44種類、前臨床試験が行われているものは90以上のものが開発されています。

開発中のワクチンには、従来のワクチンにも用いられてきた不活化ワクチンや生ワクチンという形態だけでなく、近年エボラワクチンなどに用いられているウイルスベクターワクチン、新しい技術であるDNAワクチン、RNAワクチン、抗原提示細胞ワクチンなど様々なプラットフォームで開発が進められています。

第3相試験まで進んでいる新型コロナワクチン(WHO. Draft landscape of COVID-19 candidate vaccinesより)
第3相試験まで進んでいる新型コロナワクチン(WHO. Draft landscape of COVID-19 candidate vaccinesより)

現時点で、10のワクチンが第3相試験まで進んでいます。

このうち、カンシーノバイオは中国軍への接種が、シノファームのワクチンは医療従事者への接種が行われるなど、すでに特別承認され接種が一部の人に行われているものもあります。

しかし、これらはまだ第3相試験の結果が出る前のワクチンであり、専門家からは緊急承認について時期尚早とする意見が多数出ています。

日本でのワクチン接種はどうなる?

では日本ではいつからワクチン接種が開始されるのでしょうか?

すでに日本政府は複数の製薬会社とワクチン供給について合意しています。

加藤厚労相 新型コロナウイルスワクチンの供給で米国ファイザーと基本合意 21年6月までに6000万人分

加藤厚労相 米モデルナ社の新型コロナワクチン国内供給へ 販売流通は武田薬品で交渉進める

アストラゼネカ、日本政府と日本国内における新型コロナウイルスワクチンAZD1222の供給に向けて基本合意書を締結

接種の優先順位については、

当面、確保できるワクチンの量に限りがあり、その供給も順次行われる 見通しであることから、接種目的に照らして、

・新型コロナウイルス感染症患者に直接医療を提供する施設の医療従事者等

・高齢者及び基礎疾患を有する者 を接種順位の上位に位置付けて接種する。

(2)高齢者及び基礎疾患を有する者が集団で居住する施設等で従事する者の接種順位について、業務の特性等を踏まえ、検討する。

(3)さらに、妊婦の接種順位について、国内外の科学的知見等を踏まえ、検討する。

出典:新型コロナウイルス感染症対策分科会(第10回)

となっており、医療従事者、高齢者などから優先的に接種が開始されることが検討されているようです。

接種の開始時期についてはまだ明確な時期は決まっていないものの分科会の議事録では「令和3年前半までに全国民に提供できる数量を確保することを目指す」とされています。

ワクチンによって新型コロナの流行は終息するのか?

ワクチンによって新型コロナの流行は終息するのでしょうか?

今後、開発されるワクチンの種類にもよりますが、すぐに「ワクチン接種開始=コロナ終息」とはならない可能性が高いでしょう。

まず、世界中の人にワクチンが行き渡るまでには相当な時間を要します。

またワクチン接種をすれば新型コロナには二度と感染しないのかは、現時点ではまだ分かりません。

一般的には、自然に感染することによる免疫は、ワクチン接種によってできる免疫よりも強力です。

麻疹に感染すると、ほとんどの人は生涯麻疹に感染しなくなりますが、麻疹ワクチンを接種した人は(重症度は下がることが多いものの)再び感染することがあります。

すでに新型コロナに再感染した事例が報告されており、自然感染による免疫でも再感染のリスクがあるということであれば、ワクチンによって新型コロナの問題が即解決となる可能性は高くないでしょう。

もちろんワクチン接種に意味がないわけではなく、インフルエンザワクチンのように定期的に接種を繰り返しながら免疫を保つことによって、徐々に新型コロナの流行が収まっていくというシナリオは十分考えられます。

そして最終的には、自然に感染するよりも長期間免疫を維持できるワクチンの開発というブレイクスルーによって、解決するかもしれません。

いずれにせよ、新型コロナワクチンが接種できるようになるまでには、まだまだ有効性・安全性の検証を待つ必要があり、それまでは引き続き三密を避ける、こまめに手洗いをするなど個人個人にできる感染対策を地道に続けていきましょう。

 

引用:https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20201011-00189179/