次亜塩素酸水(酸性機能水)の適正使用について

昨今の新型コロナウイルス感染拡大に伴う、マスクやアルコール消毒薬の逼迫は深刻であり、様々な代替品や代替手段などが考えられています。その中で、注目を浴びている次亜塩素酸水ですが、すべてのものに共通して言えるように、正しい使い方をしなければ効果はありません。

まず初めに、言葉の整理を致します。次亜塩素酸水は家庭用塩素系漂白剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(ハイター®などの漂白剤)とは違うものです。次亜塩素酸水は酸性、次亜塩素酸ナトリウム水溶液は強アルカリ性で皮膚などのタンパク質を溶かします。

また、次亜塩素酸水やアルカリイオン水などを総称として機能水と呼びます。機能水とは「人為的な処理によって再現性のある有用な機能を獲得した水溶液の中,処理と機能に関して科学的根拠が明らかにされたもの及びされようとしているもの」と定義されています1)。よって、次亜塩素酸水は酸性であることから“酸性機能水”となります。

酸性機能水は極めて優秀な消毒剤(殺菌剤)です。様々な細菌やウイルスに対して瞬間的な殺菌作用を持ち、しかも人体に対する安全性が高いのが特徴で、これらは過去数十年にわたる多くの研究データが証明しております。しかしながら、良い点ばかりではなく以下のような注意点もあります。

  1. 酸性機能水は有機質(タンパクなど)に触れると急速に有効塩素濃度が消費され、効果がなくなります。このため、流水下で大量に使用するのが原則です。酸性機能水が瞬間的に効力を失うことで、人体や環境に優しい消毒剤(殺菌剤)となっています。
  2. 酸性機能水しかり、機能水は生成機器の性能に左右されます。このため、すべての酸性機能水が研究データと同じ効果になるわけではありません。また、生成する条件、例えば原料となる水道水や食塩中に含まれる微量の不純物でも、生成される機能水の性状に影響を及ぼす場合があります。生成される酸性機能水の性状(残留塩素濃度など)をチェックし、消毒薬として有効な範囲内であるかの確認が必要です。
  3. 保存(汲み置き)に注意が必要です。酸性機能水に紫外線は厳禁ですので、密閉できる遮光瓶に入れ冷暗所に保管します。保存容器の素材もガラスではなくプラスチック製が良いでしょう。

以上のような注意点を考慮して、酸性機能水は正しく使われる必要があります。

本学会で発行している口腔機能水ガイドラインで使用法について詳しく説明しております。その中で手指の消毒では、次亜塩素酸水(酸性機能水)を用いた15秒間の連続流水処理でアルコール手指消毒剤(ウエルパス®)と同等の効果を示す2)としています。

よって、次亜塩素酸水をアルコール手指消毒剤と同じようにポンプ式の容器に入れ、同じ量を手にスプレーして擦り込み消毒しても同等の効果は期待できませんのでご注意ください。

次亜塩素酸水を手指衛生に用いる場合、次亜塩素酸水を流水状態として15秒間の手指洗浄を行わないと効果はありません。すなわち、この作業は石鹸で15~20秒間行う手洗いと変わらないため、次亜塩素酸水は石鹸の代替手段として用いられるものであり、アルコール手指消毒剤の代わりになるものではないことに留意する必要があります。

手指衛生として酸性機能水を用いるのであれば、以下のような使用方法が推奨できます。

  1. 酸性機能水生成機器から作られる酸性機能水の性状チェックを行い、有効塩素濃度が10ppm以上であることを確認。
  2. 酸性機能水生成機器から直接、または遮光された密閉ポリ容器内に保存された新鮮な酸性機能水を流水下で15秒以上、手洗いを行う。

なお、新たに発見された新型コロナウイルスですから、当然、酸性機能水が有効との報告も研究データもありません。様々なところで有効と思われている背景には、酸性機能水が多種多様な細菌やウイルスに対して、強い殺菌力があるため「新型コロナウイルスにも有効であるはず」という科学的な仮説3)に基づいていることにも留意が必要です。

次亜塩素酸水による手洗いをめぐる国会における質問主意書と答弁書に関連する見解

参考
1) http://www.fwf.or.jp/kinousui.html
2) 日本口腔機能水学会編:口腔機能水ガイドライン;第4版, 東京, 40-41, 2015.
3) http://bisan.fwf-aew.jp/images/tsusin.pdf

 

引用:日本口腔機能水学会会長・日本大学歯学部歯周病学講座診療准教授 西田哲也

http://www.kinousui.com/webnews/emergency202004.html